| ◆第4回:紙とカナダの森---エコフォレストリーの紹介 ユミはティシュペーパーをゴソゴソと3、4枚取り出して、チンと鼻をかんで、その紙をごみ箱に捨てた。彼女のごみ箱は、そんなティシュで溢れている。
ご存じの様に、紙は木から作られる。紙の生産には、膨大な量の木、水、エネルギーが必要とされる。
また、生産過程において木の樹液を取り除いたり、漂白したりの目的で使われる化学薬品は水を汚染し、パルプ工場からの排水口近辺の生態系に影響を及ぼし続けてきた。
カナダ森林省の1993年の統計によると、カナダの林業の業績は、丸太、材木、パルプ、製紙などの各部門とも、世界で1、2位を占めている。
BC州の生産量は全体の半数を占め、パルプと紙の生産に使用される木は年間約1千万トン(1トン=9百7キログラム)になる。
1本の木を仮に1トンとすると、1日に約2万7千トンの木がBC州内で伐採されていることになる。そしてその伐採の量は毎年増え続けている。
これだけの量の木を効率良く伐採するため、ここ30年間、クリアカットという方法がとられている。
クリアカットは一定の地域に生息する全ての木々を伐採する方式だ。
一斉の伐採により、それまで土と水を維持していた根が命を失い、土や水を維持できなくなることから、土砂崩れが起こる。
土砂崩れは河川の汚濁を招き、川や湖に住む魚の減少にも繋がっている。
更に、土中の栄養分の枯渇、その森に生息していた他の生物たちの生息地の消失による、生物多様性の減少傾向なども問題となる。
また、森林は二酸化炭素を吸収し、酸素を供給してくれる。
昨年12月の京都地球温暖化会議で、先進国は二酸化炭素の排出削減にあたり、そのかなりの部分を森林の吸収に頼るとしているのに、伐採を継続して果たして削減目標が達成できるのだろうか。
森林省が作成した法令には、政府保有地におけるクリアカット後の植林が義務付けられているが、土砂崩れが起りやすく、栄養分を失った土地では、植林した木も育ちが悪い。
また、自然な状態の森林は、二次林(クリアカット後に植林された森)よりも生物の多様性に富んでいるうえ、苗木から原生林まで、年の多様性もあるゆえ、その森に住む生物の種類も多く、それゆえ木々の成長を助ける菌類、害虫を食する鳥等との助け会いのなかで、健康な木が育ちやすい。
この原生林の森のほとんどが、カナダの森から消え去りかけている。
バンクーバー島の原生林の森は1959年には53%であったが、1990年には26%まで減り、減少の一途をたどっている。
それにも関わらず、現在も原生林の伐採は続けられている。
それでは、クリアカット以外の方法は無いのだろうか。
バンクーバー島のレディスミスの130エーカーの森で林業を営むマーブ・ウィルキンソンさんは84歳。
ここ50年間、選択式の伐採・持続可能な森の運営をしている。
マーブさんのやり方は、ごくシンプル。
年間成長率を超える伐採はしないと言う事だ。
この50年間で9回の伐採を行いながらも、森が維持されているどころか、10%の成長がみられた事が内外の森林研究家達の調査により、明らかにされた。
このやり方で十分な収益が得られるのだという。
マーブさんは言う、「持続可能な林業運営に共通して言える事は、自然の摂理に従う事、正しい常識感覚を駆使することだね。」
1988年にBC州内では7千4百ボードフィート(1ボードフィート=1ft×1ft×1inch)の成長に対して、9千〜1億ボードフィートの木が伐採された。このままでは、森の国・カナダから、森が消え去ってしまう危険性がある。
政府は森に経済的な価値しか見い出すことができないのだろうか。
森、とくに原生林の森には経済的価値以外に、様々な価値が含まれている。
美的価値、精神的価値、野性生物の存在価値、レクレーションの場としての価値など、一度失ったらお金では買い戻せない価値ばかりだ。
残念ながら世界は経済中心に動いている。そして、その仕組は、常に売り手と買い手がいて成り立つものだ。
つまり、紙や木材の消費が減るような生活をすることにより、この過剰伐採の現状を少しは変えることができるのだ。
また、リサイクル紙や、木材以外の植物繊維(ヘンプ等)で作られた紙の購入をすることも新しい方向性を生み出す可能性となる。
この先、生まれてくる世代にも、森の醸し出すやすらぎや美しさ、そこに暮らす動物達の多様性の豊かさを、感じ取る機会を残せるような生き方をすることも大切なのではないかと思う。資源は限りあるものだから。
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